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「空き家特例」が使いやすくなった。でも地方では落とし穴が

 空き家に関する税制面での優遇政策、あめとムチでいうところのあめの施策でもある「空き家特例」について書きたいと思います。
結論から言うと、これはかなり大きな変化です
空き家の相続って、正直めんどくさいですよね。
で、これまで税金で優遇をうけようと思えば「売却する前に」耐震リフォームするか更地にしないと税制優遇が受けられなかったんです。
でも、2024年4月からこれが変わりました。
売却後でもOKになったんです。
なぜこれが重要なのか
理由はシンプルで、リスクが減るからです。
従来の制度だと、こんな流れでした。

相続した空き家を売るために、まず数百万円かけて耐震リフォームや解体をする。
その後で買い手を探す。
でも、もし売れなかったら?
リフォーム代も固定資産税も、全部自分の持ち出しになっちゃうわけです。
怖いですよね。
制度改正で何が変わったのか
新しい制度では、売却後にリフォームや取り壊しをしてもOKになりました。さらに、買主がリフォームや取り壊しをした場合でも適用されるんです。
これ、ざっくり言うと「先に改修工事しなくても、売却益から3000万円控除できますよ」ってことです。
つまり、こういう流れが可能になったわけです。
空き家をそのまま売る → 買主が自分の好きなようにリフォームや解体をする → 売主は税制優遇を受けられる。
売主にとっては先行投資のリスクがなくなり、買主にとっては自分の好みに合わせて改修できる。
Win-Winですよね。
とはいえ、地方ではちょっと事情が違います
ここまで読んで「おお、これはいい制度だ!」と思った方、実は、この制度には大きな前提があるんです。
それは「売却益が出ること」です。
3000万円の控除って、売却益から引かれるものなんですよね。
だから、そもそも売却益が出ないような物件だと、あまりメリットを感じられないわけです。
たとえば、田舎の空き家。
相続した時の評価額が500万円で、実際に売れたのも500万円だったら、売却益はゼロです。
しかも評価額で売れる空き家はあんまりないことの方が多いです。
控除する売却益がないので、この特例を使っても意味がない。
むしろ「3年以内に売らなきゃ」というプレッシャーだけが残る、なんてことも。
都市部や人気エリアなら、親が数十年前に買った家が値上がりしていて、売却益が数千万円出ることもあります。
そういう物件には、この制度はすごく効果的です。
でも地方では、そもそも買い手を見つけるのが大変。
売却益どころか、安くても売れること自体がゴールだったりするんですよね。

ぼくも今現在もそうですが、これまでもそういう相談をたくさん受けてきました。
「税金の優遇よりも、とにかく誰か引き取ってくれる人が欲しい」って。
この制度改正をどう活かすか
といって、この制度改正が無意味というわけではありません。
都市部や郊外で空き家ビジネスに関わる方にとっては、明らかにチャンスです。
これまで「先行投資が怖くて売れなかった」層が、市場に出てくる可能性がありますから。
一方で、地方で空き家ビジネスをする方は、少し違う視点が必要かもしれません。
たとえば、この制度のことを知った相続人が「うちも使えるかな?」と相談してきたとき、丁寧に状況を説明してあげることが大切です。
「売却益が出そうなら、この制度は使えますよ。
でも、正直に言うと、この地域だと売却益が出るケースは少ないかもしれません」って。
そういう誠実な対応が、信頼につながります。
そして、もし売却益が見込めない物件なら、別のアプローチを提案できるわけです。
賃貸活用とか、地域おこし協力隊への貸し出しとか、移住者向けのリノベーション物件にするとか。
そして気を付けなければいけない点。
この特例には期限があります。
相続発生から3年以内に売却しないと、特例が使えなくなるんです
3年って、意外と短いですよ。
相続の手続きをして、家の中を片付けて、売却先を探して…ってやってると、あっという間です。
だから「使いやすくなった」とはいえ、ゆっくりしすぎるのは禁物なんですね。
特に都市部の物件で売却益が見込める場合は、早めの行動が大事です。
というわけで
空き家特例が使いやすくなったというお話しでしたがいかがでしたか?
正直に言うと、この制度は「都市部や人気エリアの空き家」には効果的だけど、「地方の空き家」には必ずしもメリットが大きくない、というのがぼくの見立てです。
でも、それでいいと思うんですよ。
制度にはそれぞれ得意な領域があって、すべての空き家に万能な解決策なんてないんです。
大事なのは、目の前の空き家にとって何がベストなのかを、柔軟に考えることじゃないでしょうか。